最初の最初。ユクを寝室に入れ、人間のベッドの横で眠らせるようにした。しばらくすると、朝方、ユクが人間のベッドを覗き込み、飛び乗ってくるようになった。朝、飼い主と目が合うと、ベッドに乗って良いのだ、というユク独自のルールに基づいているようであった。その後人間が、犬がシャンプーをした(された)日は人間のベッドで一緒に寝ても良い、という新しいルールを制定した。が、そのような理屈が犬に通じるはずもなく、結局毎日、ベッドで二人と一匹が寝るようになった。これが前回までのあらすじである。ユクを初めてベッドに迎え入れたとき、ユクは掛け布団の上で丸くなって寝ていた。そういうものか、中に入りたいとかないんだな、と思った。夏という季節であったからか、しばらくは、掛け布団の上で丸くなるスタイルで一緒に寝ていた。
秋が深まり、冬にさしかかった頃、掛け布団の上で丸まっているユクの身体の表面が少し冷えている感じがした。外が白み始めた頃、おいで、と声をかけると布団の中に潜り込んでくるようになった。なんだ、布団の中が嫌なわけではなかったんだね。
冬になり、一層寝室の温度が下がった。布団の中で寝ることに慣れた犬は、寝始めから布団の中に入ってくるようになった。なぜか始めは人間の脚の間が落ち着くらしい。私は蛙脚を強いられるが、湯たんぽのように温かいので、甘んじて受け入れている。夜中、暑くなるのか、ブルブルをした後、人間の腹の高さくらいまでせり上がってくる。朝が近づいてくるとさらにほふく前進でせり上がり、私の隣で寝る妻の頭をマズルでぐりぐりと押しのけ、妻の枕を半分貸してもらっているようだ。誠に図々しいが、妻は喜んでいるようなので、誰も困ってはいない。
犬と寝る。その後のその後。
とうとう一匹と二人が川の字になって寝ています、というご報告であった。