このような表現が小説などによく出てくる。フンッと、確かに鼻を鳴らしたような音を出すことがある。しかしこれは、匂いを嗅いだ息継ぎとしてのフンッであるように、私には思われる。
ユクは散歩に出て、そこら中の匂いを嗅ぐのが大好きだ。あまりにも地面を嗅ぐので、警察犬を連れて捜査でもしているような気分になることすらある。
いつもおやつをくれる近所の犬の飼い主さんを見つけるのが得意なユク。割と遠くからでも匂いを嗅ぎ付け、こっちだ、こっちだ、と言わんばかりにリードを引く。着いて行くと向こうに人影が。あ、あのおやつをくれるお父さんだ!ユクは駆け寄って行き、さっと目の前でお座りをして良い子をアピールする。本当に鼻の利く犬だ。呆れと感心が入り交じる。
地面だけではない、草むらもよく嗅ぐ。その様子を観察していると、嗅ぐ嗅ぐ嗅ぐ嗅ぐ嗅ぐ嗅ぐ嗅ぐ嗅ぐ、思いっきり吐く、くらいのリズムだ。つまり匂いを沢山嗅ぎたいが故に鼻で息を吸うのが忙しく、身体に溜まった大量の息を一瞬で吐いているのではないか。大きく息を吐くために、フンッと鼻を鳴らすように息を吐く。それが、犬が鼻を鳴らしているように見せるのだ。
サンプルはユクだけなので、犬全般において、鼻を鳴らすのは息継ぎである、とは断言できない。しかし、ユクが鼻を鳴らす場合は、嗅ぎ過ぎたか、嗅いでいる途中で鼻に何か入ってしまったか、のどちらかであり、息継ぎなんだと思っている。
フンッ。
足元でユクが鼻を鳴らした。