ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

横断歩道を渡るときに「ヨッシャー!」と気合いの入る犬。

周りに自然が多いとは言え、広々としているわけではない。鎌倉の道は狭い。車と人との距離が近い。つまり犬にとっても、たいへん危険な環境だと言える。車とすれ違うときはリードを短く持ち、道の端にできる限り寄るように立ち、毎回緊張をしてやり過ごしている。ユクは散歩のとき、リードを引っ張るし、私たちの歩く前を突然横切るし、動くものに反射的に飛びかかろうともする。そんな状態だからこそ、リードを握っているこちらは車の近くを歩くとき、特に気をつかうこととなる。
一旦、山道やお寺の敷地内に入ってしまえば、リードを持つ手の緊張を解ける。そこからようやく安心して散歩を楽しめるようになるのだ。

 

ところで、ユクには横断歩道を渡るときの癖がある。必ず、二三回はくるくると回りながら渡るのだ。しかも、その回っているときの顔は、「ヨッシャー!」という顔なのである。信号機がない横断歩道を渡るとき、目立つように人間が手を上げる。それに気付いた車が止まってくれる。止まってくれたドライバーに会釈しながら犬のリードを引いて渡る。そこでユクの「ヨッシャー!」である。なかなかに恥ずかしいが、これを毎回やる。横断歩道を渡るだけなのにどうしてそこまで気合いを入れるのだろうか。

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ひとつには、リードを持つ飼い主の緊張感が伝わってしまっているのかも知れない。案外、犬はリードを持っている人間の心持ちが分かるものだ、と何かの本で読んだ。人間が堂々としていれば、安心して犬も堂々と歩くらしい。ほかには、散歩のときはお腹が減っているから、帰ってご飯だ、という気持ちから気合いが入っているのではないか、とも推察される。うちでは、朝夕ともに散歩が終わってから食事を与えるようにしている。野生の犬や狼は長い時間歩き、ようやく獲物を捕らえて食事にありつけるわけで、そのリズムを意識したものだ。しかし、ユクは狩りに出ていないことは分かっているだろうし、帰ればご飯だ、ということも学習しているだろう。なので、早く帰ってご飯にしよう、と気合いが入っているのだとしても理解はできる。しかし、帰りだけではなく、行きにも気合いが入るので、関係がないかも知れない。やっぱり分からない。
ユクと話ができるなら一番に、この横断歩道でヨッシャー!となる理由を尋ねてみたい。

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