鎌倉は街だと言っても海も山もあって、犬の散歩コースには事欠かない。うちは山の方なので普段の散歩コースは山道であることが多い。ずっとアスファルトの上を歩くよりは、土や砂の上を歩くほうが、犬の肉球にもやさしいのではないかと想像している。ご近所の、犬と暮らしている方々に新しい道を教えていただいたりして、散歩ルートが日々増えていくことが楽しい。
家から30分ほど山道を歩くと源氏山公園というところに着く。ユクと一緒に行ってみた。公園はただの広場のようであるが、鎧姿の源頼朝像が大変目を引く。大きい像だ。
広々とした公園を眺めて、こういう場所に遠足なんかで来ると楽しいだろうな、と優雅なことを考える暇もなく、ユクがぐいぐいと引っ張る。ユクには、いわゆる引っ張り癖というものがある。犬のしつけ参考書によると、犬が引っ張る間は歩かず、引っ張るのを止めたら進みはじめる、という方法が良いらしい。しかし、そんなことでユク坊が引っ張るのをやめる様子はない。いや、もっと根気強くやらねばならないのだろうな。
とにかく源氏山公園にはやって来た。広場で座ってゆっくりするか、という雰囲気はユクにはない。ぐるぐると誰もいない源氏山公園を歩きまわって帰路につくのだが、来た道を帰るのではおもしろくない。源氏山公園を下る道にはいくつか選択肢がある。今回は化粧坂切通を下る道を選択した。短いけれどいつも濡れていて、滑りやすい坂道である。引っ張り癖のある犬と下るのはとても怖い。ユクが来て半年以上もこの切通を避けてきたのは、その恐怖心からである。
今回なぜ下ろうという気になったかというと、とてもグリップ力の強いトレイルランニング用のシューズを買ったからである。山道ばかり歩くし、ユクに足を踏まれることも多いので、3ヶ月も履けば、靴が潰れてしまう。ここは少し奮発してトレイルランニング用のシューズを履いてみればどうだろうか、と考えて購入に至った。これが大変良く、ユクのリードをしっかり握ったまま、山の坂道を確実に、滑ることなく歩ける。山を走るためのシューズだけあって、その機能に感心した。
もちろん、化粧坂切通の濡れた箇所においても、まったく滑ることなく、そのグリップ力を発揮してくれた。さすがに写真はぶれたが、犬と化粧坂切通を下るということを成し遂げることができた。
また新しい散歩ルートが増えた。