春の源氏山公園に出向いた。世の中がウキウキしているのか、私だけがウキウキしているのか、よく分からないが、目の前がウキウキして見えた。明るくなるのは良いことだと思うので、ウキウキしていよう。源氏山公園にも徐々に人が集まってきていた。
ユクはいつも忙しそうだ。
人がいようがいまいがにおいを嗅ぐパトロールを欠かさない。誰に頼まれているわけでもないのに、パトロールを請け負っている。真剣にやり過ぎて、それはもう趣味の域を超えているように思われる。馬鹿やってないで早く行こうぜ、と言いたいところだが、真面目にやっているので、そう言うのも憚られる。まあ、せいぜいやりなさい。
茂みにマズルを突っ込む。ときには頭ごと。幾重にもなった枯れ葉の絨毯に脚を踏み入れる。少し暖かくなってきたこの時期にこれをやると、頰や脚に米粒のようにマダニが付くことが多くなる。山の中を歩いた後は、全身のチェックが必要不可欠だ。そして、初夏が過ぎ夏になると、山の散歩コースを控えるようになる。
源氏山公園で可愛い子犬に出会った。ユクは子犬に対しても偉そうにすることがあるので、恐る恐る近付ける。今回は大丈夫そうだ。飼い主さんとお話をしてみると観光で来られているようだった。
妻がマダニの話をした。暖かくなってきて、山を歩くとマダニが付くことがある、とか、昨日もうちの犬にマダニが付いていた、などとお話をした。すると、先方の飼い主さんの顔が曇った。うちの子にマダニまみれの犬を近寄らせないで、という顔に見えた。
違うのです!そういう話ではないのです。
と、打ち消せないまま、その場を後にした。