犬の年齢は七を掛けると人間の年齢と同等と言われる。幼年青年成年壮年老年という流れを割合として当てはめているに過ぎないことは分かっている。それでも時折七を掛けてしみじみしてしまう。
五歳ということは、人間なら三十五歳ということになる。中年と言うには早いかも知れないが、十分におじさんではある。私は五十を過ぎているので、まだまだ「ユク坊」と呼んで差し支えないだろう。
来年は四十二歳、再来年は四十九歳。
まだまだ老年ではないが、九歳くらいになってくると、一気に還暦を迎えるわけで、何とも言えない気持ちになる。
私が還暦を迎える頃にユクも同じくらいの歳頃になる。今の還暦はまだまだ若いが、昭和のイメージなら、爺さん二人と言って差し支えない。
誕生日がおめでたいかどうかは、歳を重ねると変わってくる。
若い頃は何も考えていなかったのだろう。大人に近づく!めでたい!それだけだ。歳を取ったからめでたくない、というのも違う。めでたい、というのは何がめでたいのか、よく考えるようになる、のほうが正確だろう。
ユクが死に近づくから、めでたくない、というのはまったく的外れなことだ。それなら赤ちゃんが一歳になってもめでたくない。死に近づいていることに違いはないからだ。
つきなみではあるが、ユクがこの世に生まれてきてくれたことがめでたい。
よくぞ生まれてきて、よくぞ野良犬時代を生き抜いて、よくぞ保護されて、よくぞ引き出してもらえて、よくぞ飛行機にも乗って、よくぞうちまで来てくれたことだ。
お誕生日おめでとう!ユク坊。