ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

物の正当な進化とはなにか。便利と格好悪いのはざま。

妻がいつも言う。
「傘はもう少しどうにか楽で便利な物にならぬものか」
たしかに。

せいぜい自動で開くとか軽量化されたとか、その程度の進化でしかない。何千年も、根本的に変わらないものではないか。しかも、機能的には風でひっくり返ってしまったり、簡単に折れたり、横風で結局のところ雨に濡れたり、畳んでも濡れたままで扱いに困ったり。その中でももっともどうにかならないか、というのが、片手が塞がるという点である。

率先して雨宿りするユク坊。

今でこそ、改札は時計やスマートフォンで通ることができるが、かつては財布を取り出し、切符を買い、それを駅員さんに渡し、ハサミを入れてもらう、というようなことをしていた。ハサミはともかく、自動改札機が一般的になって久しいが、濡れた傘を持っているときは決して快適ではない。

タケコプターのように頭の天辺に装着する傘があっても、あまり流行らないだろう。格好悪い。皆がそれを使えば、格好悪いなんて気持ちもなくなるものだが、誰もやっていない今、格好悪いと皆が思っているに違いない。

なにか頭にのってないか?

雨でも散歩に連れて行かねばならない犬と暮らしている。
雨雲レーダーというものには大変世話になっている。とても良く当たる。更新頻度が高い予測なので、そりゃあ当たるに決まっている。数時間前に確認していた予測とは変わっていることも多い。更新された時刻直後の状態が今の状況にもっとも近いということになる。そのことを認識したうえで雨雲レーダーを使うのがコツといえばコツだ。

そんなに降らないって言ってたよね?(すみません)

雨が降っている中、ユクを連れて行く場合、私たちは傘をささない。片手が塞がるという点が、犬の散歩においては、最大の難点となるからだ。犬がマーキングをすればペットボトルを取り出して水をかけねばならないし、便をすれば「ポイ太くん」を速やかに出して拾わねばならない。常に片手には犬とつながったリード。

犬用というか、犬の飼主用というか、それらの用具も工夫がされ、進化を遂げている。多くその恩恵に預かっている。例えばリードの末端はたすき掛けできるようになっていて、万一リードが手から離れてしまっても犬がどこかに逃げてしまうことはない。犬と一体なので、犬が崖に落ちれば人間も落ちるという弱点はある。それでも犬の飼い主たるもの、どこかへ行ってしまうことを考えれば、飼い犬と崖に転落することくらいは本望だろう。
本望だが、ユクがこちらを気にせず、ダッシュしたりすると、バイーン!と身体を引っ張られて、非常に痛い思いはする。本望だが。

こう見えてもダブルリード。たすき掛けなので、写真も安心して撮れます。

ダブルリードというバックアップシステムもすばらしい。
文字通り、リードを二本装着して、持ち手も二本ということなら大変だ。当初はそのようにしていたが、今使用している物は違う。持ち手はひとつ、犬の側が二股になっており、首輪とハーネスに金具でそれぞれつなげることができる。二本のリードを持つのは大変で、その二本が絡まることもあり、かえって危険なのでは、と感じることもあった。このスマートなダブルリードはとても重宝している。

俺達はつながっている。(ダッシュするなよ)

進化の方向性がおかしいな、と思う物のひとつに、「手持ち扇風機」がある。
団扇と扇風機を合体させたようなアイデア商品で、昭和の時代に、未来では小さな扇風機を手に持って歩いています、と誰かが言ったら、爆笑していたと思われる。が、誰も格好悪いとは言わず、当たり前のように、カラオケマイクでも握っているかのように扇風機を握っている。
サラリーマンのおじさんが扇子を出してきて仰いでいる様もあまり格好良いと思わなかったので、私はしたことがない。

駅のホームで、女子高生が手持ち扇風機を構えながら友達とお話していた。
マイクをもったレポーターのようで、インタビューでもしているように見えた。そもそも、扇風機の前でしゃべったら、声が宇宙人のようになって滑稽なことになりはしないのだろうか。