無論、犬の話だ。
ユクを見ていると、ユクがオスだからといってメス犬が好き、ということでもないようだ。多様性を取り入れている犬で、好きな犬は好き、嫌いな犬は嫌い、であり、性別など関係ない。
散歩中の犬同士のご挨拶のときも、うちの子はオスがダメで、のようなことを仰る飼い主の方がいらっしゃる。犬というのはそういうものなのかと思っていたが、ユクを見ているとそうでもないらしいことが分かる。ユクだけ、という可能性もなくはないが、そんなこともなかろう。
ユクは間もなく五歳になる。
すっかり大人の犬で、うちのはまだ仔犬なので、などという言い訳はできない。四年も一緒に暮らしているので、まだ来て間もなくて、というのも無理だ。社会性というか社交性というか、そのようなことについては、とても困っている。半ば諦めていると言っても良い。日々、犬の対応は変わっていく。性格もそうだ。
二歳くらいの頃は、自分より若い犬に対してとても優しかった。ところが、三歳を過ぎたあたりから、その傾向も怪しくなってきた。基本、他の犬と仲良く遊ぶタイプではないにしろ、吠えてしまうことも多くなった。吠えて追いやることを覚えてしまったのか。
このように多くの犬とうまくいかないし、油断すると威嚇したり、噛みついたりする感じなので、こちらもあまり他の犬には近づけないほうが良いと思うようになった。特に小さな犬に対しては。
数頭、ユクが大好きな犬がいる。
なぜその犬たちが好きなのか、は不明だ。柴犬、ビーグル、ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバーなど、犬種も様々だ。そして大抵は好きな子に拒絶されてしまう。好きな犬に対して、ユクはとても謙虚だ。匂いを嗅いでください、とお尻を差し出すし、よそ見をして、ぼくは何も怖い存在ではないですよアピールもできる。それからユクは自分も相手を嗅ごうとする。が、拒絶されてしまう。
好きな犬の飼い主さんにすり寄る。「何とか仲を取り持ってくださいよ」とお願いしているように見える。
相思相愛の犬が見つかったとき、どのような感じになるのだろうか。
愛なのか恋なのか何なのか。