ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

吠えちゃった犬。

ユクはお隣りに住んでいる黒柴君が大好きだ。
彼との窓越しでの初対面では吠えた。このとき初めて、ユクの吠える声を聞いた。
その後直接ご対面し、ワンプロをけしかけたものの、マウントを取られお腹見せポーズ、完全服従の意思が芽生えたのか、お隣りのワンちゃん大好き犬となった。お隣りの犬にずっと吠えまくるよりは、服従でもなんでもしてくれて、仲良くしてくれているほうが、飼い主としてはありがたい。「仲良く」と書いたが、相手の犬は、ユクが近づいていくと、ゲゲゲッと顔をそむけてしまう。遠くにいるときは嬉しそうにユクに寄って来てくれることもあるのだが、近づくとやはりゲゲゲッとなる。完全にユクの片思い状態である。

f:id:oven9:20211106161921p:plainゲゲゲッとなろうがお構いなしに意中の相手の周りをウロウロしてクンクンしようとする。近くにいることができるだけで、ひとり尻尾を振っていて幸せそうだ。犬の愛は見返りを求めたものではなく、純粋で美しいものだ、と聞く。確かにそのようにも見えるが、ユクの見返りを求めない愛は、自分の欲望のためだけに起こす行動と紙一重でもある。人間が単純に見習って良いものではない。

ユクは犬に心を許すと、その犬の家族(つまり飼い主である人間)にも同様の好意を示す。普段、おやつをくれない人間には目もくれないユクが、大好きな犬の飼い主さんにはすり寄っていく。一匹というよりも、一族として好意を持っているのかも知れない。

犬は悪人を見分ける能力があるのかも知れない、と書いた日の翌日のこと。
いつものように、ユクは家の外で犬用ベッドを出してもらい、日向ぼっこをしていた。ユクがここにいるときに、郵便配達員さんや宅配業者さんがやって来ると、唸ったり、吠えたりすることがある。作業着が怖いのかな、くらいに考えていた。しかし、この日は違った。ユクが吠えたので見てみると、なんとユクの大好きなお隣りの奥様に向かって吠えていた。おすそ分けを持って、うちを訪ねてくださっていたのに。

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お昼寝中のユク坊。

これにはお隣りの奥様も私たち夫婦も大変驚いた。ユクは、お隣りさんが玄関から出てくるところから見ていたそうだから、どこか他所から来たわけではないことは分かっていたはずだ。隣りに住んでいる、という認識などないのだろうか。何を基準に吠えているのか。自分のテリトリーを侵す者は許さん、ということだろうか。ゆっくり寝ているのに、邪魔する者はけしからん、ということだろうか。

その後、ゆっくりとお隣りの奥様がユクに近づいて、手を差し出した。手を嗅ぐと、ユクの尻尾がいつものようにゆらゆら揺れ始めた。嬉しいときの表現だ。ちょっと吠えてしまったことへの恥ずかしさも垣間見えた気がした。テヘペロ、と言ったところか。実際にお隣りの奥様の顔をペロッとして詫びを入れていた。

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