お散歩に出掛けると、周辺にお住まいの犬たちと出会う。三年間をかけて、ユクが関係を作り上げてきた、近所の犬仲間たちだ。
互いに空気のようにそこにいるだけ、という関係の犬もいれば、ユクが一方的に好きで仕方ない犬もいる。ただ、残念なことにユクが好きな子は、あまりユクを好きな感じではないことが多い。要するにユクは片想い犬なのだ。遊びを仕掛け合う仲間もいる。ただし毎回遊びが行われるわけではなく、向こうが遊びたそうにしているのに、ユクは周辺の草むらの匂いを嗅いで、知らぬ顔をしていることもしばしば。ワガママというか、マイペースというか。
いくら時間をかけても反りの合わない犬もいる。何が気に食わぬのか、こればっかりはどうしても分からない。
それでもひとつ、気になっていることがある。
飼い主さんが犬を交わらせないようにしているパターンのとき、ユクはとても憤っているように見受けられる。犬を交わらせたくない理由は色々あるだろうから、悪いことではない。交わらず、大人しくユクもすれ違ってくれればよいものを、激しく怒る。
それはそれは、周りの人たちが引いてしまうほど激しく怒り、吠えるので、もうどうしようもなくなる。なだめてはいるのだが、まさに焼け石に水、どうしようもない。
あれは犬に対して吠えているのではなく、あちらの飼い主に対して吠えている。交わらせてもらえないことに腹を立てているようだ。
犬の社会性という言葉があるが、個性もあるし育つ環境もある。人間社会の中で、犬の社会性を育てるというのはなかなかに難しいことなのだと思い知る。
何より、吠えている状態のユクしか知らない皆さまに対して、残念で仕方がない。ヘソ天で甘えているユクも、ぜひとも見ていただきたいものだ。