ユクには受け入れる力がある。
嫌なことは、嫌であることを一応は表現する。それでも最終的にはその状態を受け入れてくれる。ユクのそういう部分に大変助けられている。
うちへ来た当日は、玄関から出るのが怖く、今では大好きな外へのお散歩にも行けなかった。仕方ないので、初日はお散歩はなし。部屋の中でお漏らししてしまった。絶対に家のなかでは用を足さないユクが漏らしてしまったのだから、相当に苦しかったと想像できる。
翌日、少し強めにリードを引いて、玄関から出してやった。受け入れる力を発揮した瞬間だ。一度出てしまえば、何も怖がることはなく、お散歩を楽しみ始めた。元々外で暮らしていた犬だから、外が平気なのは当たり前かもしれない。
お風呂もそうだ。
二三週間に一度シャンプーをされるユク。毎回、その準備段階から雰囲気を嗅ぎ取り、ブルブルと震え始める。風呂場へ抱っこして連れて行かれることがほとんどだが、抱っこされたら、受け入れた顔をしている。実際、濡れる以外に何も嫌なことはないはずで、終わればおやつのご褒美があるし、良いことでいっぱいなのだ。
それもあってか、何度かおきに、自分の足で風呂場まで来ることもある。受け入れる力と勇気と下心を発動したようだ。
受け入れる力の高い犬だが、どうしても受け入れられないことがある。動物病院での診察だ。診察台にすら乗らない。このときばかりは受け入れる気持ちはゼロだ。死にものぐるいで逃げようとする。爪切りもさせない。以前、ある動物病院で飼い主が立ち会わない状態で爪を切ってもらったことがある。そのときの記憶もあるのか。どんどん嫌いになってしまい、いまでは断固拒否ということになってしまった。
言葉で説得することができないので、難しい問題である。
動物病院ではいつもいっぱいいっぱいの顔をしている。目は血走っているし、とても疲れるだろう。
私も病院は嫌いだ。気持ちはとても分かるぞ、ユク坊。
でもな、皆ユクのためにやってくれているのだぞ。