なるべく犬と一緒に居てやるようにしている。犬の時間を人の時間に換算するのは不自然な気持ちになるが、やはり犬時間は早く過ぎていく、と折々に思ってしまう。群れで暮らす習性があったり、人と暮らしてきた歴史もある。犬も人と居たいと思っているようだ。
仕事をしているときは、見えるところに犬用のベッドを置いてやる。すると、そこへやってきて丸くなって寝ている。センサーは活きているようで、仕事がひと段落したり、電話を切ったりしたタイミングで起きてこちらの様子をうかがう。仕事が終わるのを、とにかく待っているだけなので退屈なのだろう。すまんね。
家で仕事をしているときは良いが、こちらもずっと家に居るわけにはいかない。外に出て、人に会ったり、買い物をしたり、柔術の練習に行ったりせねばならない。
ユクは人間の行動をよく観察している。お散歩の準備なのか、人間だけが出掛けようとしているのか、を見極める。
自分が置いていかれそうになると、ささやかな抵抗を企てる。
私が二階へ行って着替えたりできないように、一階の扉の前で座り込んでこちらを睨む。二階へ行くときもついて来て、お前どこにも行かねぇよな、という風にベッドで丸くなる。
いよいよ出掛けようか、という段になって、ベッドでヘソ天を披露したりもする。ヘソ天は絶対であることをよく知っているのだ。
いや、こちらもつらいのだ。
断腸の思いで出掛けているのだよ。
どこにでも連れてゆければ良いものだが。