ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

挨拶をする飼い主。世知辛い世の中。

挨拶をすることは簡単なことだ。
それでも、少し躊躇してしまったときに先に挨拶をされ、こちらは「ああ、はい」みたいな感じになってしまうことがある。負けだ。いや、挨拶は勝ち負けではない。だが、私は負けた、と思うことにしている。先手必勝、先に挨拶をするのだ。無視されても良いではないか。それは見事な一本勝ちである。一本負けだけは避けたいところだ。

負けた!

ただでさえ、右や左へ予測のつかない動きをする犬と一緒に歩いていると、すれ違う人たちに迷惑をかけてしまう。申し訳ございませんと低頭に、すれ違いざまにすかさず「こんにちは!」。これだ。
挨拶をされて嫌な気持ちにはならないだろう。嫌な気持ちになるのは、挨拶をされたのに、自分は発せなかった場合においてのみである。つまり互角以上の決着が必ずつくのだ。念のために申しあげておくが、挨拶は勝ち負けではない。

こんにちは!大丈夫か?

過日。
知っている犬の飼い主と思しき小学生の女の子が自転車に乗っていた。しかし、この年頃の子供は二週間も見ないと成長して雰囲気が変わっていることがある。似ているがどうだろうか。しかし、先述の通りだ。挨拶の闘いに負けるわけにはいかない。ユクも一緒にいるし、こちらのことも分かるだろう。

「こんにちは!」
とにこやかに先手を打った。
すーっと女の子は自転車に乗って過ぎていった。無言である。世にいう、華麗にスルーというのはこのことだろう。

カレーにする?

違ったのか。彼女はあの犬の飼い主ではなかったのか。別人?他人の空似?ユクに相談することもできず、悶々と散歩を続けた。

街の掲示板に「不審者情報」という貼り紙が見られる。
子供に声をかけた不審者がいました、というような内容のこともある。「こんにちは!」はセーフだろ。いやアウトなのか。子供に声もかけられない世の中になってしまったのはなぜだ。

世知辛い世の中。
このようなときに使う言葉なのだろう。