ユクはクン活部の部長だ。
部員は私たち夫婦の二名のみだが、お散歩の際には部長として、ユクは日々部活動に勤しんでいる。
特別、私たちが任命したわけではない。ユクが勝手に部長ぶっているだけである。部員たちの面倒を見てくれるわけでもない。ひょっとしたら、クンクン活動に部員たちを連れて行ってやる面倒見の良い部長なのかもしれない。
普段の散歩では、ある程度ユクに行き先を委ねている。家で寝てばかりの犬が、やっと外に出られるお散歩の時間。好きなように好きな道に行かせてやりたいと思っている。
何かとても大事なことがあるかのように、真面目な顔で草むらを嗅ぎ回っている。クンクンした情報が一体何に役立っているのか。本当は何のためにもなっていないのではないか、と人間は思う。
何の役にも立たない趣味ほどおもしろいものはない。きっと、人間の尺度で役に立つことなど、そこにはないのだろう。
ユクのもっとも生き生きとした顔を見られるのはクン活散歩であることに間違いはない。そんなにおもしろいのなら、なるべくクン活させてやりたい。あらためてクン活部長に任命する!