北鎌倉駅を利用する学生は多い。
鎌倉学園、北鎌倉女子学園、大船高校などの生徒がいつも、小さな駅のホームで賑やかだ。北鎌倉駅は小さいが、ホームは長い。横須賀線や湘南新宿ラインの列車が15両も連なるからだ。「次の列車は短い10両編成です」などとアナウンスが流れるが、神戸の田舎出身の私にしてみれば、10両はまったく短くなどない。4両や6両で育っているのだから。
北鎌倉駅のそばに桜の木がそびえている。パンデミックのこの三年間は桜の木だけが春を主張していた。出会いや別れといったものとは少し違う寂しさが醸し出されていた。
今年は違う。
学生たちはまだまだマスクの呪縛から逃れられないが、それでも若い明るさがはちきれている。これぞ春だ。ユクはパンデミック後の北鎌倉しか知らない。だからこの感じが戻ってきて、そこをユクと歩けるのはとてもうれしい。
観光客による賑わいも戻ってきた。ここ数週間は外国人の方々も散見される。すっかり忘れてしまっていたこの感覚。観光地らしくなってきた。
桜がキレイだね。とユクに話しかけながら樹の下を散歩する。
相変わらず、ユクは地や草や木の根元の匂いを嗅ぐことに忙しい。観光客の連れた知らない犬の情報も沢山落ちているのだろう。
ユクの「地元風吹かし」が心配ではあるが、頬を撫でる風は暖かく心地よい。
皆にサクラサク。