約一年ぶりに、ユクをドッグランに連れて行った。初めてのときは、犬のほうがすぐに飽きてしまい、早く帰りたいといじけ気味だった。今回はどうだろうか。
着くといきなり、ユクは警戒感を表した。多数の犬の匂いを察知したものと思われる。お友達が沢山できるかもよ、などと励ましても犬には通用しない。犬が集まる場所の代表格は、動物病院だ。そんな犬の集まるネガティブな雰囲気をユクは敏感に感じ取っているに違いない。そこには行きたくない、と全身を使って後ずさりした。
受付を済ませて、食事をオーダーした。食事が出来上がるまで、ドッグランコーナーで遊んでいてよろしい、ということだったので、さっそくユクをドッグランに連れて行った。「大型犬・中型犬用」と「小型犬・中型犬用」の二つのエリアがあった。ユクはどっちだ?
十キログラムのユクは、小型犬よりの中型犬というところだろうか。まずは小型犬のエリアに入ってみた。リードを外す暇もなく、シュナウザー犬がユクの方へ遊びにやってきてくれた。ユクのテンションも上がっていた。屋外でリードを外すことには、やはり緊張が伴う。慎重にリードを外すとすぐに、ユクは他の犬と追いかけっこをし始めた。
ユクが駆け始めると、歓声とも悲鳴とも取れるような声が、その場にいる飼い主さんたちから湧きあがった。純粋にすごく速い、という気持ちと、うちの子にぶつかったりしたらどうしよう、という不安が入り交ざった気持ちの表れだと思われる。(すみません)
不安をよそに、ユクは大はしゃぎで駆け回る。勢い余ってフェンスにぶつかったりしていたが、平気な顔をして走り続けていた。犬同士が追いかけっこして、しばらく経つと、お互いに少し落ち着いてきて、静かに鼻を突き合わせたり、見合っていたりする。犬同士のコミュニケーションは、このように人間抜きで行われた方が、見ていても発見が多い。大体において、人間が介入するから、おかしな事になるのかもしれない。人間の子供の付き合いと同様であろう。
ユクの疾走を久しぶりに見ることができた。食事中は(それなりに)良い子にしてくれていたので、人間もランチをゆっくり美味しく食べることができた。ドッグランエリアでは前回よりも積極的に駆け回っていたし、相変わらず自分より幼い仔犬には優しい。帰りの車ではすぐに眠りこけていたので、気力も体力も随分使ったのだろう。
一年前とは随分違った。
帰宅後、近所へ夕方の散歩に出かける。門の締まった円覚寺の階段に腰掛け、地元のお友達を待っているユクの背中が、とても誇らしく思えた。