ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

未来から来た飼い主。

未来の予測は簡単だ。誰でも、未来はこうなるであろうと想像することができる。そして、それは概ね間違っていないだろう。人間が想像できることしか、未来では実現していかないので、当たり前といえば当たり前だ。では、未来が予測できるなら、お金を儲けることも簡単か、というとそうではない。それが「いつ」実現するのか、ということが誰にも分からないからだ。結局のところ、そのタイミングを見計らうのがビジネスの肝ということになる。

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お散歩は「いつ」?

色々と恵まれた国や時代に生まれたので、日々を平和に暮らすことができている。のほほん、といったところか。それなりに悩んだり苦しんだりもするが、俯瞰すれば恵まれていることこの上ない。このようなのほほん族においても、「いつ」死ぬかなど分からない。明日死ぬかも知れない。それは万人に平等だ。ずっとその心持ちでいることは難しいが、たまにであれば、いつ死ぬか分からないということを思い出すことも良い。今がとても輝かしく感じられるからだ。人も犬もいつ死ぬかなど分からない。分からないからのほほんとしていられるのだが。

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ユクは保護されたときから、後ろ脚に骨折の跡があり、歩き方も少し普通ではない。身体の発達もどちらかといえば上半身がたくましく、下半身は小さい。おそらく前脚のほうを沢山使って歩いたり走ったりしているものと思われる。毎日元気に飛んだり跳ねたりして走り回っているので、普段は脚が悪いことなどあまり感じさせない。

それでもときどき将来のことを考える。若くして脚が弱ってしまって、お散歩を楽しめなくなるときが早いのではないか。車椅子のようなものを履かせなくてはならないのではないか。など、今から考えなくても良いようなことを考えて、不安になる。

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そんなとき、私は「未来から来たごっこ」を行う。こんな感じだ。

ユクは歳を取り、あまり歩けなくなってしまった。お散歩にも行きたがらず、寝ていることが多い。柔らかかった関節も随分硬くなってしまった。毎日散歩に行きたがり、外が大好きだったユク。「阿呆」になってぐるぐると円を描いて走っていた犬とは思えない。もう一度あの走り回っているユクの姿を見ることが出来たら。

ということで、未来から過去にやって来た私。やって来る方法の詳細は設定していない。ドラえもんでもドクでも何でも良い。

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このようなことを空想しながら、元気に歩いているユクの背中をしみじみと眺める。ぐいぐいと引っ張るユクの力をリード伝いに感じる。忙しそうに匂いを嗅ぎ回る息づかいに耳を澄ます。熱いものがこみ上げてくる。

そして、何が引き金となっているのか、まったくもって不明な「馬鹿走り」も温かい目で見守ることができ……いや、それは……やはり……でき……ない。

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馬鹿になってやろうか?という顔のユク坊。