ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

幸せな日々には二種類ある。

一つには大きな変化を楽しむ日々だ。これは主に若者の求める幸せだと思う。とにかく大きな変化を求めるのだ。毎日同じなんてつまらない。何かしらの行事も毎週のようにあると良い。そのような日々を理想としている。

もう一つは、変わらぬ日々に幸せを見出すパターンだ。こちらは長く人生を経験して来られた方が感じている幸せではなかろうか。「変わらぬ日々」と書いたが、それは「何となく同じ」程度の意味である。本当のところ、変わらぬ日々などはない。無常だ。季節は移ろい、人も歳を重ねる。風が吹き、時は確実に進む。ぼんやりしていると変わらないように見えるところに、変化(幸せ)を見出す日々と言える。

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飼い主の脚でお昼寝ルーティーン。(カメはバスキング中)

ルーティーンという言葉が数年前に流行った。ラグビー選手がボールを蹴る前に同じ所作を行ったことに注目が集まり、ルーティーンという言葉がより一般的になったように感じられる。このルーティーンも同じことを行っているようで、きっと毎回違うはずだ。プロスポーツ選手もその小さな変化を見逃さずに、心身の修正を行っているものと想像する。

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雨の日の散歩

犬の散歩に毎日の大きな変化はない。慣れてくるとより同じ様な日々が続く。しかし、同じ様なだけで、確実に毎日が違う。犬と暮らし始めて、二つめのほうの「幸せな日々」を意識するようになった。同じことを続けるほうが、小さな変化を認めやすい。
日本に暮らしていてありがたいのは、季節の移ろいだ。これは初心者(?)でも感じやすいところだ。

職人が毎日コツコツと同じことをしている。おばあさんが田舎で毎日同じことをして暮らしている。そのことを若い頃は、退屈な人生だ、と思っていた。今はそのようなことは思わない。むしろ、同じ様に見える日々に微細な変化、あるいは幸せを見出して生きていることがとても美しく思える。

f:id:oven9:20211013103711p:plain職人や田舎のおばあさん達は、実際にはそのようなことすら考えず、淡々と生きているのかも知れない。きっとそうで、それが理想的だ。

淡い暮らしに美しさを感じるようになるとは。
ユクが来たおかげか、単に歳を取っただけか。

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