ユクは大きい方をするとき、なかなか位置が定まらない。まず、どこでしようか、ということから始まる。一年も一緒に散歩をしていると、いつどこで催すのか、ということが分かってくる。分かってくると偉そうに言ったが、思いもよらないところで構え始めることもあり、本当のところはよくうろたえている。
急に催すこともあれば、催しそうになり構えてみたけど、やっぱりやめて場所を改める、ということも多い。構え始めても、脚が悪いからか、ちょっとしたダンスのようにしばらくバランスを取るためのステップを踏む。私はなるべく邪魔をしないようにリードを緩め気味にして見守る。なんとか定まってくれ。
ユクが姿勢を定めようとしているそのとき、大きな音をたててバイクがやって来たりすると、ユクはその気をなくす。さっと構えを解き、場所を移す。ハイキング客がおしゃべりをしながら横を過ぎようとしたときなども同じだ。その気をなくす。
心の中でいつも叫んでいる。
「犬が構えているでしょうが!」
もちろん、ドラマ「北の国から」の中華屋さんのシーン、黒板五郎さんの口調である。
通行人には知ったことではない。
が、どこかで構えている犬に出遭ったら、そっとしておいてあげて欲しい。