ユクがうちへ来た頃、散歩中どこで排泄を始めるのかがまったく分からなかった。すたすたと歩いていると思いきや、道のど真ん中で突然立ち止まり構えはじめるので、何度も狼狽えた。特に大きい方は「ポイ太くん」で拾って処理せねばならず、車が来てしまっては大惨事となりかねない。いつ犬が排泄してもF1のピットクルーのように速やかに対応する所存で散歩をしていた。
散歩は毎日のことなので、少しずつパターンが見えてきた。何故か駐車場に駆け込んで排泄することも多く見られた。散歩に出かけてしばらくすると必ず排泄をするので、行くコースによって排泄する場所が決まってきた。お寺コースならこの辺り、山越えコースならこの辺り、という具合に。それが分かってくると、いつなん時斬りかかられるかも知れぬ、という歩き方をしなくてもよく、少し心に余裕が持てた。
排泄してくれると、ひと息。歩くことに集中できる。
というわけでもなく、すぐに二度目の波がやってくることがある。ひと息ついている場合ではない。コースによって、一回目の排泄を行う大体の場所は把握した。しかし、二度目の波をどうするか、ということが課題として残った。観察は続く。そして、最近あることに気が付いた。ユクのお尻の穴の形について。
大きい方を催している、もしくは準備(?)段階に入っているとき、お尻の穴の形がハート型になっていることに気が付いた。排泄が終わると、ハート型はダイヤ型になる。犬が機嫌良く歩いているときは尻尾が上がっている状態なので、後ろからお尻の穴の形が良く見える。ダイヤ型なら慌てる必要はない。ハート型なら排泄したいということなので、安全かつ落ち着いて構えられそうな場所に連れて行ってやる。構えようとしても友達の犬がやって来たり、周りが騒がしかったりすると、しばらく我慢することがある。そのように、少しは我慢することはできるようなので、道の真ん中でハート型になっていれば、ちょっと我慢してね、とユクに言いながら安全な場所まで共に駆ける。
お尻の穴の形を観察すると排泄したいのかどうかがわかるようになったのは大きい。一度目が終わっても、まだハート型のときがある。これは出し切れておらず、ここから二度目がある、というサインだ。ダイヤ型になっておれば、しばらくは大丈夫。この見分け方だけでも大変助かっており、犬の散歩に出かける人間の心には、随分と余裕ができた。