ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

可愛いのは犬か。それとも人か。

夕方の散歩。ある方面へ出掛けると、必ずと言って良いほどに出会う男性がいる。その方は犬を連れてはいない。お仕事は引退されているお年頃だろうか。毎日独りで散歩をしておられるようだ。よくお会いするので、もはや顔見知りみたいなものだ。当然ご挨拶もする。立ち話をする程度の仲ではないが、すれ違いざまに「こんにちは」と申し上げる。すると向こうもにこやかに挨拶を返してくださる。

君たちの可愛いの定義がわからんね。

犬はあまり得意ではないように見受けられる。鎌倉によくある細い路地で出会ったときなど、ちょっと犬が苦手な感じを醸し出される。それでもユクを見て、「可愛ね」と言ってくださる。犬に触ったりはせず、一定の距離を保っておられる。やはり苦手なようだ。

路地。

ある日。
妻がユクのリードを持ち、私はその後ろを歩いていた。二人と一匹での散歩だ。いつも立ち寄る広場で、例の男性に出会った。いつものように男性は「可愛いね。可愛いね」と何度も仰った。すれ違い、後方で、「飼っている人も可愛いね」と聞こえた。犬のついでに妻も褒められたのだろうか。聞き間違いかもしれないし、間違ってなくとも褒められたのだから良いことだ。

ええおべべ着てはりおすなぁ。

またのある日。
北鎌倉駅のロータリー辺りで、その男性に出会った。この日も妻と一緒で、妻がリードを持っていた。私は散歩付添人である。
男性はすれ違いざま、「可愛いね。可愛いね」と、この日も仰った。すれ違いざま、今度は「連れている犬も可愛いね」と仰ったような気がした。

なんと犬がついでになっているではないか。
聞き間違いかもしれないが。

よく聞いているユク坊。