ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

アナログな犬。

カシオのデジタル時計を叔母からプレゼントしてもらったのは、私が小学五年生の頃だった。コンピュータがパーソナルなものになりかけた一九八〇年あたりのことだ。

ファミコン

日本は今では考えられないほど、希望に充ち満ちた様子だった。東京五輪大阪万博を経て、私の育った街、神戸では「ポートピア’81」という博覧会が開催された。バブル前夜、高度経済成長真っ只中、といったところだろう。
ゲームウォッチファミリーコンピュータ(通称ファミコン)が数年内に続々と発売された。

デジタルになりました。

あらゆる身の回りの物が、アナログからデジタルに、変わっていった。それは少しも悪いことのようには感じられなかった。今でも私はデジタルなものが好きだ。アナログの良さがあるのは分かるが、デジタルに置き換わっていくことにマイナスを感じていない。

ペットにもデジタルなものがある。SONYAIBOがその代表か。朝夕の散歩に行かなくても良いし、便を拾ったりすることも必要ない。シャンプーをすることもないし、ブラッシングも不要だ。

これからシャンプーだ、と悟ったユク坊。

実際、犬を飼うと面倒な事が多い。周囲の人にも大変気を遣う。しかし果たして電源を切れば良い、というデジタルペットの良さは、「良さ」だろうか。

人間は不思議なもので、利便性ばかりを幸せとは感じないようだ。

散歩から帰った犬の足裏や身体を拭いてやる。
そのとき、私の顔は誰に向けたものでもない笑顔なのである。