あるようだ。
ユクのくしゃみが止まらない。
数年前、ユクの来る前なので、犬を飼う前のことだ。小田原城へ、妻と遊びに出かけた。小田原では五月に「北条五代祭り」なるものが行われる。しかし、この北条は鎌倉殿の北条とは関係がない。もとは北条という性ではなかった早雲が改姓し、北条を名乗るようになったのだ。したがって、「鎌倉殿の13人」にあやかって盛り上がることはない。この北条ってあの北条政子とつながりがあるのだろうか、と調べるきっかけにはなるのかもしれない。
小田原城の中を散策していると、戦国武将のような鎧のコスプレをしたチワワを見かけた。飼い主さんが天守閣をバックに写真撮影を試みていた。犬はなんだか目をショボショボさせていた。飼い主さんは「眠いんだよねぇ、もう少し我慢しててねぇ」と犬に声をかけながらお座りをさせて撮影している。
そうか眠いのか、と疑いもなく眺めていた私の横で妻が、「花粉症だね」と言った。犬にも花粉症がある、ということをそのときに初めて知った。そのようなことは考えたこともなかったが、犬だって人と同じ哺乳類だ、アレルギーがあるのは普通のことだろう。花粉症かもしれないと思いながらそのチワワを見ていると、まったくもって不憫であった。眠いのではない、花粉症がつらいのだ。戦国武将の鎧姿にショボショボ涙目のチワワは、今でも私の脳裏から消えていない。
さて、ユクの話である。
昨年の花粉が飛ぶ時期に、目やにが出ていたことがあり、花粉アレルギーかと心配した。季節が過ぎると、目やにが収まったので、やはり花粉に反応していたものと思われた。そして、今年。二月になって、ユクがくしゃみをし始めた。豪快なくしゃみを日に何度もしている。大好きなクン活に影響がないか、と案じている。
生まれてこのかた花粉症の症状などなかった私も、三年ほど前から症状が出るようになった。「花粉症デビュー」というやつだ。自分に症状が出るまでは、そのつらさなど知る由もなかったが、これは本当につらい。薬をもらって、ふた月ほどは過ごすことになる。
つらさを知ったがゆえに、ユクのつらさも多少は分かる。
ともに花粉症をやっつけよう、ユク坊。
