ユクは鹿模様だ。これは名の由来でもある。
犬は様々模様があって面白い。黒い毛の犬でも、真っ黒ではなかったり、部分的に違う色が混ざったり、皮膚は白かったり。よく見ると同じ犬種でも微妙に違っている。
ユクの模様の特徴は、第一にはその鹿柄で、第二にはジャックラッセルテリアのような茶色と白色の配色だ。気安く「ジャックラッセルテリアのような」などと書いたが、外を歩いているときに、そのような表現はまず使わない。もしかしたら本当にジャックラッセルテリアの血が混ざっているかもしれないが、ユクは雑種だ。血統書の付いたジャックラッセルテリアの飼い主相手に、似てますね、などと言うことは憚られる。内心、似ているな、と思っても、ジャックラッセルテリアの飼い主さんのほうから、似ているね、と言われるのを待つ。
ユクは雑種につき、血統書はもちろんないが、なかなか良い模様をしていると思う。パンツを履いているように見えたりするのはご愛嬌だ。
散歩中、ユクの後ろ姿を見ていることが多い。ピンと立派な尾を立てて歩いている様はなかなか勇ましい。「見事な尻尾で賞」を差し上げたい。また後頭部の模様も面白い。左右が非対称なのだ。これはなんだか「のれん」に見える。こんちわぁ席空いてるぅ？と蕎麦屋か何かののれんをくぐった瞬間の風情である。
そのようなことを思い巡らせながら、ユクの後をついて散歩している。平和な日々だ。
