ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

鹿の角が届いた。犬が野性を取り戻すツール。

自宅で仕事をしている私は荷受けに忙しい。通販が身近になったいま、毎日のように何かが家に届く。チャイムに対してユクは敏感だ。だらだらと寝そべっていても、チャイムが鳴ると、サッと起き上がり、人間とともに玄関へ向かう。番犬としての役割を果たそうとでもしてくれているのだろうか。一緒に二階にいたとしても、犬が先導して階段を降りてゆく。いきなり番犬が飛び出してはいけないので、玄関前の扉を閉め、人間だけが犬をかき分けて玄関前へ。

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無事受け取った。届いた段ボール箱を開ける。ユクは開梱時に毎回、自分のものである可能性にかける。じっと、人間が箱を開ける様を見ている。中身を取り出すと、二本脚で立ち、見せろ見せろとよじ登ってきてとりあえず嗅ぐ。どんな物でも一応匂いを嗅ぎたいのだ。

荷受後のルーティンが終わり、ようやく人間がじっくりと中身を確認できる。お弁当箱ほどの小さな箱から、いくつかの白い物体が出てきた。なんだ、この骨のようなものは。扱いは夜まで保留された。
夜、妻が帰宅して、それが鹿の角であることが判明した。ユクにあげるものらしい。鹿の角、共食い。とイメージされた。

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さっそくユクに本物のユクの角を渡した。少しの迷いもなく咥えて、ベッドに横たわりガリガリし始めた。妻が言うには、鹿の角には獣の匂いがあり、犬にはそれがたまらないそうだ。たしかに、たまらん、これ最高といった感じで夢中である。ガリガリしている間、ユクと呼びかけても反応しない。ガリガリに忙しそうだ。

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それでも、三十分ほどが過ぎ、もうそろそろやめさせたほうが良いのではないか、と鹿の角を摘んで引き離そうとした。するとユクが、がるゔゔゔっ、と小さく唸って離そうとしない。瞬間、ユクに野性を感じた。鹿の角から出る野性味がユクにも伝わったのだろうか。

犬をなだめながら取り返した鹿の角を嗅いでみたが、獣の匂いは全く感じられなかった。