ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

髪の毛の色にうるさい犬。

ユクは臆病な犬だ。警戒心が強い、と言い換えることもできる。
遠くに見知らぬ犬を見かけると、歩を止めじっと相手を観察する。まだ30メートルくらい距離があるのに、後ろ脚は小刻みに震えている。そして小さく、ゔゔゔゔゔゔと唸り始める。

f:id:oven9:20210503175823p:plain

もちろん相手が人の場合も同様だ。帽子やサングラスを着けていると唸る確率は高くなる。ユクにとってそれは、得体の知れないもの、と映っているのかも知れない。近所の高校生がゴロゴロ転がしている野球の道具が入っていると思われる大きなバッグにも警戒感をあらわにする。しかし、これには飛びかかろうとするのだから、リードを持っている私も油断はできない。ユクの反応をよく観察し、反応する必要がある。

f:id:oven9:20210503175811p:plain

ゔゔゔゔゔゔゔ

犬同士の挨拶を、最近では上手にできるようになってきた。これは大きな成長だと思う。しかしそれでも初端に唸ってしまうことがあるので、相手の犬の飼い主さんが近づかせたくないな、という素振りを見せることもある。ユクはそれを敏感に感じ取り、今度は唸るだけでなくリードを噛んだり飛び跳ねたり草をむしゃむしゃ食べたり落ちている枝を振り回したりして憤りを表現する。そして、その行動を見た相手の犬と飼い主さんは去っていってしまう。そのような悪循環に陥ってしまうのだ。もう少し優しく近づけば仲良くできるのにな、と感じるが、そこはユクに任せるしかない。

f:id:oven9:20210503175805p:plain

むしゃくしゃしているユク坊

過日。ユクが立ち止まり、じっと前方を見て、小さく唸り始めた。犬はいない。目を凝らすと、髪の長い女性の後ろ姿が坂の下に見えた。その髪は、黄色に近い、明るい茶色に染められていた。ユクの横で私は吹き出してしまった。ユクの「得体が知れないもの怖いモード」が発動し、唸り始めていたからだ。「あれは人間だよ」と言い聞かせてから、リードを引いて横を通り過ぎた。必要以上にユクはその女性と距離を取ろうとした。

f:id:oven9:20210503175816p:plain

昨日は髪を赤く染めた人にも唸っていた。どうやら髪の毛の色に敏感らしい。外国に行って、ブロンドの人たちに囲まれたら、と想像して、マスクの下の口元が緩んだ。