ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

犬の匂い。

一九九〇年代の話。大阪梅田の商店街に大きなペットショップがあった。今はもうそのお店はなくなっていると思う。犬や猫の他、爬虫類や猿などの種も売られていた。何度目かのペットブームだったのだろう。その過熱ぶりを象徴するかのように珍しいとされる動…

人がいなければいたずらをしない犬。

我が家では、犬の行動範囲が月日を追うごとに拡がっていった。今や禁止されている場所は台所くらいのもので、その他は自由に行くことができる。最初の一年間は、二階へ来ることを禁じていた。寝室も仕事部屋も二階にあるので、寝るときと仕事をしているとき…

頑固ジジイかやさしい爺さんか。

人間の子供たちの成長は体感としてとても速い。知り合いの子供たちもあっという間に大きくなっているし、顔つきも背丈もどんどん変わる。犬の成長はそれ以上に速い。そのように感ずるのは、人間の寿命を基準とした時間感覚を犬に当てはめて考えているからだ…

くよくよしないでいまを生きる犬。

ユクの大好きなお隣さんが引っ越してしまった。黒柴君のことも、その飼い主であるご夫婦のことも、ユクは大好きだった。最後、挨拶に来てくださったときも、ユクは恥じらう乙女のようにご夫婦にすり寄っていた。飼い主である私たちにもここまではしないので…

明日死ぬのなら何をしたいか。人生は思い出のかたまり。

これまでの人生で何度か、明日死ぬ、という夢を見たことがある。この場合の夢とは、叶えたい夢ではなくて、寝ているときに勝手に見てしまうほうの夢である。毎回、夢の中でうろたえることはうろたえるのだが、結末は同じ。寝るのだ。ああもう、寝て死にます…