ユクが水を嫌いなことは何度も書いた。海へ行くことは大好きだが、海には決して入らない。波打ち際五メートル前までが限界である。砂浜に着くとすぐに伏せをして、空中の匂いを嗅ぎ始める。その匂いが好きなのだろうか、それとも犬たちの匂いを探しているのだろうか。伏せている場所は、波打ち際まで相当な距離だ。

五月も終わり頃になると、海の家の準備が始まっていた。夏だけの海の家。一年中置いたままにしないところが日本人らしいなと思う。日本に限らないのか。海外の砂浜はどんなだろう。

ユクは水が嫌いなものだから、雨降りもあまり好まないようで、すぐに雨宿りをしたがる。玄関を出て雨が降っていれば足が止まる。それでもなだめなだめ連れ出すと、小雨がだんだん気にならなくなるようで、雨の中を楽しそうに歩いている。小雨に限るが。レスキュー隊のようなレインコートを着ることも嫌がらない。何かを着ることを嫌がらないのは、ユクの、人間が助かるという意味で良いところの一つだ。

波打ち際には近寄りたくないくせに、川や側溝の際、ギリギリを歩く。普段の散歩でもよく、段を踏み外したり、側溝の蓋の穴に足を取られたりしているので、ユクはドジなやつだ。だから、あまり際を歩くのはこちらが心配になる。

そして、際を歩くだけではなく、下を覗き込みもする。一体何を見ているのだろうか。「おーい、誰か溺れてないか」という吹き出しをつけるとぴったりな様子だ。一緒に覗き込んでも、もちろん私には何も見えない。魚はいないし、虫もいない。いや、小さな虫がいるかもしれないが、私には見えない。
今週は、季節外れの台風がやってくるようだ。