暖かくなってきた。散歩で少しの坂を駆け上がるだけで息が上がってくる。暑さのせいだろう。ユクの口も開いている。ユクは口を閉じていても口角が上がっているので、なんだか笑顔のように見える。別に笑っているわけではないとは思うが、にっこりしているように見えるのだ。これは犬にとってはメリットでしかないだろう。人間に可愛がってもらえるからだ。

坂を上がっている最中に、ユクがこちらを見上げる。笑顔でこっちを見てくる。いや、ただ暑くて口が開いているだけなのだが、こちらからは笑顔に見えてしまう。「散歩がとっても楽しいよ」とでも言っているように見える。人間は犬の笑顔に弱いので、ついつい立ち止まっておやつをやってしまう。

笑顔といえば、できるだけ近所を歩く時は笑顔でいるようにしている。へらへら笑っていても気持ち悪いので、ちょっと機嫌が良い程度の感じかもしれない。引っ越してきたばかりでもあるし、できるだけこちらから挨拶をするように心がけてもいる。小学生には無視されることも多いが、「こんにちは」くらいは言っても、「変なおじさんに声をかけられた事案」とはならないはずだ。

小学生の女の子で、おそらくまだ十歳にはなっていないくらいの子だろうか、きちんと挨拶を返してくれる子がいる。使い方が間違っているが、「親の顔が見たい」と思ってしまう。どのような家庭環境で育つと、このように挨拶ができる子供になるのだろうか。

私自身も、子供の頃は挨拶も恥ずかしくてろくにできなかった。だから、挨拶を返せない子供たちの気持ちもよく分かる。

うちの犬も挨拶は下手だ。「下手」というのは人間の価値観なので、ユクにとっては知ったこっちゃあない、ということだろうが。