今日は一年に一度の特別な日だ。誕生日ではない。ユクが初めて家に来た記念日だ。六年になる。六年は長い。小学校に入学した子が中学生になるくらい長い。しかし体感はあっという間だ。毎日同じように散歩をしているからか、時の流れが早く感じられる。だからといって、毎日違うルートを散歩するのも犬は嫌がると思う。犬は毎日、自分の縄張りを歩いて回るのが楽しいように見えるのだ。

二ヶ月前に引っ越しをしてから、ユクにとっても私たちにとっても新しいことだらけの毎日だ。新鮮な体験が多い。そのせいか、少し時の流れも緩やかになっている感じがする。なるべく新しい土地に慣れさせたいので、積極的に二階堂を通る散歩ルートを主軸としている。ユクもそれなりに楽しんでいるし、ルートも間違わずに先頭を切って歩いている。だが、ほぼ毎日のように、北鎌倉へ行くチャンスを伺っている。

今日はうちの子記念日なので、思い出の場所である北鎌倉へ連れて行ってやることにした。チャンスを逃すまいと、分岐点に来ると早足で北鎌倉への道を選択する。そんなに必死にならなくても、連れて行ってやるのに。

北鎌倉に住んでいた頃よりも、入念に北鎌倉界隈の匂いを嗅いでいる。「滅多に来られないのだから」という懸命さが、見ていてこちらに伝わってくる。その夢中になっている様子を見ると、あまり連れてきてやれていないことが申し訳なく感じてくる。今日は特別な日だから、いつもよりクン活の時間を増やしてやった。

帰りは(いつものことだが)途中何度も振り返る。匂いを嗅ぐふりをして、また振り返る。後ろから誰かが追いかけてきていないか、というような雰囲気である。人間から見ると、名残惜しそうにしているようにも見える。実際にそうなのだろうか。

平常時の散歩の倍は歩き、何とか暗くなる前に自宅に着いた。

帰ってきたら、新しいソファーに倒れ込んだユク坊。手足がピクピクと動いて、早速楽しい夢でも見ているようだ。