大阪に来た。今回は、ずっとお休みをしていたお茶のお稽古が主な目的である。本当は月に三回あるのだが、毎週大阪に来るわけにもいかないので、来られる時にはなるべく沢山のクラスに出ることにしている。先生もそれを許してくれているので、甘えさせていただいている。

久しぶりに点前座に座ると、やはり道具が手に付かない感覚がある。これは明らかに稽古不足というものだ。自宅で独り点前の稽古をすればよいかといえば、それもまた違う。お茶の稽古というものは、お茶を差し上げる相手がいてこそのものであるからだ。
犬を連れていないのに、犬の散歩に出かけるようなものだ。そのくらい、茶の湯には相手が必要なのだ。

大阪に気に入っている鰻屋がある。そんなに色々と食べ歩いてきたわけではないが、ここに勝る鰻は今のところない。関東に越して来てからは、蒸してある関東風の焼き方にも馴染んだ。それはそれで好きになった。しかし、関西風の表面をカリッと焼き上げた鰻が、やはり好きなのだ。

お茶のお稽古が終わったが、あまりお腹が空いていない。折角大阪までやってきたのだから、あの鰻重を食べたい。お昼の選択を失敗したのだ。お稽古の合間、社中の人たちと近所の定食屋に行った。ランチのメニューが鶏フライ定食一択だった。品数がとても多く、大満足の内容だったのだが、午後からの稽古が眠たくなるくらい満腹となった。

腹持ちが良すぎる。このような状態で鰻重を食べに行っても良いものだろうか。悩みに悩んだ挙句、鰻が焼き上がるまで三十分ほどかかるのだし、その間にお腹が空くのではないか、という結論に至り、鰻屋に行った。考えは的中した。お腹が空いていない感覚など何であったか、というほど速やかに平らげてしまった。

ユクを連れて歩いていると、最初は海へ行くつもりなどなくても、段々とその気になってくることがある。「仕方ないな、今日は海まで付き合ってやるか」と。
もちろん、ユクは最初からその気である。