二階と一階が逆転した。引っ越しする前の家は一階がリビングだった。
「居間」と言うだけあって、多くの時間をそこで過ごした。テレビもダイニングテーブルもキッチンも、全て一階にあった。二階にあったのは寝室と私の部屋と妻の部屋。この三つだった。

引っ越してきた。今の家は二階リビングだ。これまでの暮らしと上下逆さまになることが多い。前は「寝るよ」と言うと二階に行っていたが、新しい家では下に降りて行く。人間はすぐにその生活に慣れることができた。問題は犬だ。

たとえば散歩から帰ってきたとき。毎回、玄関でユクの足や体を拭いてやり、最後にブラッシングをする。それらが完了すると「よし!」と言って、家の中へ入って良いという合図を出す。これまでは玄関とリビングが直結していたので、そのまま数十センチ進めば、ご飯を期待した喜びのジャンプが始まっていた。

今の家のご飯会場は、二階リビングである。
「よし!」と言われても、「さあ、ぼくはどうすれば良いのでしょう」という顔をしてこちらを見る。どうしてよいのか分からないのだ。仕方がないので階段の下まで一緒に行き、上の方を指さし、「あそこに行って待っててくれ」とお願いする。ユクは空気を読むのが上手なので、トコトコと階段を登り始める。その瞬間、褒めそやす。

このような感じで行動と場所を紐づけていった。
すると、条件付けが成功したのか、玄関で「よし!」と言えば、階段まで勝手に歩いて登り、二階のリビングで待つようになった。

引っ越してからの数週間、ユクの順応ぶりに感心しきりである。
下でもたもたしていると、「ご飯はまだか」と凄いプレッシャーをかけてくる。
焦るのでやめてほしい(うれしい)。