ユクの順応力の高さについては前に書いた。
受け入れる力が見事なのだ。
引越しをユクは何度も経験している。
ただし、それは大変短い期間の話で、宮古島で保護されて数週間施設に預かってもらい、その後、飛行機に乗って、千葉の預かりボランティアさんの家で二週間。そして自動車に乗って、北鎌倉までやってきた。

その頃、ユクは何も持っていなかった。本来無一物というやつだ。ユクという名前すらなかった。
今回の引越しはそこが違う。
六年間も過ごした場所であり、様々なおもちゃも手に入れた。
家そのもの、場所もそうだろう。おそらく縄張り意識のようなものを持っているようだった。

そこから引っ越すので、ショックが大きいのではないか、北鎌倉へ戻りたがるのではないか、そのような心配ばかりしていた。

ところが、次々とこちらの心配を打ち消してくれる。
スケルトン階段は克服するし、玄関を出たところで待つこともできる。新しい家は玄関と土間が続いていて、土足エリアがどこまでかということが分かりにくいのだけど、それもすぐに理解した。キッチンには入らないし、物色もしない。本当によくできた犬だと、我が犬ながら感心する。

問題は二階にあるウッドデッキである。
ユクのために、と言っても過言ではないデッキだ。
だが、ユクが怖がって近寄らない。本当に臆病で頑固なので、難しいかもしれない。
杞憂であった。
日の差し込む天気の良い日。
ユクがウッドデッキでくつろいでいた。
すぐに、「ウッドデッキに出るから、その窓を開けてくれ」とまで要求するようになった。

「よくできた」という表現で良いのだろうか。
マイペースというか、まぁ、文句はまったくないのだけど、とにかく、あれだ。気に入ってくれて良かった。