以前、覚園寺で「戌神様」のお守りを買って、今も財布に入れている。
その、犬にフレンドリーなお寺である覚園寺は二階堂にある。
二階堂というエリアは、北鎌倉からだと少し距離があり、毎日の散歩コースにするには少し無理がある。しっかり歩くぞ、という休日に訪れるような場所だった。実際、正月休みとか、そういう時期に私たちはユクを連れて散歩に来たものだ。
そんな覚園寺が近くなったのだ。
白い鳥居が目を引く鎌倉宮の辺りから、覚園寺へ道が伸びている。
川沿いを北上していく、大変に趣のある道である。
ユクはこの道を行くのが好きなようだ。
「もう帰ろうよ」と鎌倉宮のバス停で引き返そうとしたのに、「ぼくは覚園寺へ行くのです!」という強い意志を持ってリードを引いた。

仕方がない。愛犬が行きたいというのだから、極力付き合ってやる。
自動車がすれ違えないような細い道が続く。
このようなところに車で突入したくないなぁ、などとぼんやり考えながら、ユクに引かれて奥の方まで来た。もうすぐ覚園寺だ。

と、その時、ユクが右へ鼻先を向け、より一層強く引き始めた。
これは、「天園ハイキングコース」の入口ではないか。

ユクの目は爛々としている。
なるほど、覚園寺を目指していたわけではなく、山を目指していたのか。
しかも、このコースはユクが何度も通っている既知のコースでもある。
「本当にごめん、今日は日も暮れるし、今度にしよう」
言っても伝わらない犬に心底謝って、引き返すことにした。
申し訳なさそうにしていることは、伝わったと思う。

また、今度な。ユク坊。
私は覚園寺へ行くつもりだったが、ユクは最初から山を見ていた。