平日だ。
私は自宅で仕事をしている。
リモートワークではない。自宅がオフィスなので、オフィス勤務である。

仕事の相手とはオンラインや電話で接することが多い。リアルな接触ではないので、パンデミックのときに主流となった形式である。「打ち合わせをしたいので、とりあえず来てください」というようなお願いが、パンデミック以降皆無となった。これは大変ありがたいことだ。身なりを整える時間、そこへ向かう時間、帰って来る時間、途中で余計な寄り道をしてしまう時間、などなど余計な時間がかかることもあり、「とりあえず来て」の打ち合わせに良いところなどほとんどない。挙げ句、電話で良かったのではないか、というような内容だと、本当に時間を無駄にした気分になってしまうものだ。

コロナのおかげで、世の中がオンラインでも良いではないか、という風潮になったのは本当にうれしい限りである。犬との時間も多く取れるというものだ。
明るいうちにユクと散歩に出かけていると、いい歳したおじさんが仕事もせずにぶらぶらしていて、一体何者なのか、という怪訝な目で見られてしまうのではないか、と心配することもない。リモートワークの普及で、みんな昼間からぶらぶらしているからだ。仕事をしていないわけではないだろう。自宅で仕事をすれば、時間の調整もできるものなのだ。

犬の散歩に一時間くらい出かけることは、仕事をうまくやりくりして、打ち合わせなどの時間を調整すればなんとかなるものだ。犬の散歩に出かける時刻は定まっているので、そこを外して予定を組み立てていけば良い。
ただ、クライアントに「この時間帯は犬の散歩があるので、お打ち合わせはできません」というわけにはいかない。「別件で出かけなくてはならず」もしくは「そこは予定がございまして」くらいでお願いするのが、大人というものだ。
一時間くらいなら、途中で電話が鳴っても、戻り次第すぐに対応いたします、という返事もできる。

引っ越しをして一週間が過ぎた。
まだ、ユクとの散歩コース、散歩時間などが定まっていない。ユクはユクで、新しい場所の新しい匂いの収集に忙しい。散歩の半分は立ち止まって匂いを嗅いでいる。
段葛を端から端まで歩き、さあ折り返そうとしたが、ユクが「ここまで来たら海っしょ」という顔をしてリードを強く引く。先週末、ユクが海に行きたそうにしていたのに、別のところに連れて行った私の申し訳ない気持ちも後押しをし、海に連れて行ってやることにした。

ユクは海でも匂いをひたすら嗅ぎまくり、ご満悦だった。
ここまでで一時間が過ぎていた。
繰り返すが、平日である。
家に帰る頃には二時間が経過し、私はすぐに仕事に戻らなければならなかったが、まずはユクに夕飯を作ってやらなければならない。ユクの世話をし、ようやく仕事に戻った。
ペースをつかむまで、犬も人間も、もう少し日にちが必要だろう。
