市内ではあるが、引っ越しをした。距離が近いとなかなか梱包も進まない。積み残しても、最悪何往復かすれば良いか、という甘えがあるからである。実際にはそう甘くもない。たとえ近くても往復するのは大変だ。

人間たちが忙しなく物を片付けているので、犬も落ち着かない。ユクはそっと寄ってきて、自分の大切にしているおもちゃをくわえ、自分のベッドに大事そうに持って帰ったりした。ひょっとしたら、自分の持ち物も持っていかれるかもしれない、と感じたのか。

いよいよ引っ越し当日。場所が近いこともあり、午後からの便でお願いしていた。早めにユクの午後散歩を終え、私たちは引っ越し屋さんが来るのを待った。午後四時ぐらいから積み込みが始まり、日の沈む前に新居に着いた。
ここで問題発生である。
電気がつかなかったのだ。

どうやら契約の切り替えがうまくいっていなかったらしい。仕方がないので、暗い中、荷物の搬入をしていただいた。このようなことで「今日は止めておきましょう」とならないのが繁忙期の引っ越し業者のすごいところだ。

私はiPhoneのライトでひたすら照明係をこなした。何とか荷物は入れていただいたが、電気のない新居に移り住むわけにもいかない。結局その日は、元の家にもう一泊することになった。夜逃げならぬ、夜戻りである。

引っ越しの翌日も、北鎌倉を散歩する私たち。昨日、引っ越して行ったはずの犬と人間たちが、まだ歩いている。いつものお友だちに出会うと、なんだか照れくさい。
引っ越し予定日の翌日、問題なく電気は開通し、その日の夜から新しい家での生活が始まった。

犬は人につき、猫は家につく、というが、ユクが新しい環境に慣れてくれるのか。
まずはそれが心配だ。