ユクは、人間からおやつをもらうことに長けている。
飼い主である私たちはもちろん、散歩に出かけているときも、他の犬の飼い主さんから上手にいただいている。

ユクは、全面的に人間を信用しているわけではない。残念だが、それは飼い主も含まれている。九割くらいは信用してくれているとは思うが、たぶん一割くらいは疑っている。
甘い言葉には裏がある。
美味しいおやつには裏がある。

野良犬時代や、保護されて去勢された経験などから、どこか人間を完全には信用しない、という態度になってしまったのだと思う。

ユクは水に濡れることを嫌う。
三週間に一度のシャンプーの日、ガタガタ震えて嫌がるが、最終的には諦めて風呂場でシャンプーされる。噛んだり鳴いたりはしない。ただ震えて、嫌であることをアピールするまでだ。

保護されるまでに何があったのか、想像するのは容易い。だが、ユクにとっては、楽しいことよりも辛いことのほうが多かったのかもしれない。おやつにつられて捕まえられたのかもしれない。脚が悪いのも、もしかしたら人間に蹴られたのかもしれない。
トラウマというものは、なかなか消えるものではないのだろう。それでも、なるべく良い経験で上塗りをしてもらいたいものだ。

今日も、美味しいおやつをいつもくださる方を、正座(オスワリ)して最後まで見送るユク坊であった。