ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

父から受け継いだ呪文。

空気が乾燥している。
私の肌もからっからだ。

ハンドクリームなど使ってこなかったのだが、五十歳を過ぎたあたりから必要を感じて使い始めた。ちょっと気取ったハーブ配合のようなものを使っていたが、今年からはニベアにした。何ら問題はない。ニベアメンという男性向けのものを使っていると、妻に「おじさんくさい」と言われる。分かる気がする。理髪店で用いられる何かに似ている。つまり、理髪店の香りがする。だから、おじさんのイメージに直結するのだろう。

おじさんのイメージ。

ニベアメンはさっぱりしていて使い心地が良い。が、ふと、普通のニベアでも良いのではないか、という気がしてきた。ニベアウィメンとはなっていないし、「家族みんなで使えます」といったキャッチコピーも、どこかで見た。

普通のニベアは、ニベアメンに比べると少し重たい。塗り広げる際に重さを感じる、という意味だ。普通のニベアだって独特の匂いがする。懐かしさは感じない。使ってこなかったからだ。

てめえ、何か肉球に塗りやがったな!

ニベアを塗った手で、ユクにオテをさせる。ユクの肉球に、こっそり塗ってやるのだ。いい迷惑かもしれないが、きっとユクのためになっているはずだ。

そいつはどうかな。

乾燥しているから、火事のニュースも多い。火事には本当に気をつけたいものだ。若い頃は煙草を吸っていたので、煙草の火を消したかどうか、外出してから気になって仕方がないことがよくあった。いまは煙草を吸わなくなったので、こうした心配がなくなり、とても良い。また、煙草とライターという持ち物も減るので、一石何鳥にもなる。

好きな言葉は「一石二鳥」。

父親が若い時分、ひとり暮らしをしていた頃、「電気・ガス・窓・水・アイロン」と書かれた紙がアパートに貼ってあったそうだ。私はそれを聞かされていたので、二十代でひとり暮らしを始めたとき、「電気ガス窓水アイロン煙草」という呪文を唱えてから家を出るようになった。最後の「煙草」は、私が付け足した。

煙草!?

過日、大阪出張の折、部屋を出るときに、自然とこの呪文が口をついた。
「煙草」まで言って、笑ってしまった。