ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

スーツケースよりユク。

相変わらず、毎週出張の日々である。
大学で学生たちに向かって熱く(るしく?)語りかけている。毎年、せっかくの縁であるからと思い、他人様の子ではあるが、本当に幸せな人生を送ってもらいたいと願って対峙している。もちろん、単位だけが目当ての者も多いので、全員が正面から聞いてくれているわけではない。それでも、一年に何人かは真っ直ぐな清らかな目でこちらを見つめてくる。だから、それが何人であれ、こちらも熱を入れてやっている。

新幹線の駅は内外の観光客で賑わっている。キャスター付きのスーツケースをゴロゴロ転がしている人が多い。あれはなかなかに場所を取る。しかも、転がしている本人は自分の歩けるスペースのことしか考えていないように見える。

前方から、私の三倍はあろうかという肉体を持った外国人がスーツケースを転がしながら歩いてくる。そのままのコースだと、あなたはすれ違えるだろうが、スーツケースは私の正面に来るのではないか。私はそう思う。

飛行機になら乗ったことあるぜ。

無論、スーツケースの進路はそれを転がしている人に委ねられている。私は念ずる。隣には他の人も歩いており、私にはもうこれ以上進路を変える余地がない。何とかそのことに気づき、スーツケースの向きを少しだけずらしてくれないものか。だが、そんな念が通ずるはずもない。

おやつが欲しいと念を送るゆく坊。

他人様に相当の迷惑をかけるスーツケースが許されるなら、もっと犬を連れて歩くことも、社会に許容されてよいのではないか。ユクなら、前に人がいれば自分で避けるだろう。スーツケースよりよっぽど賢い。

何か言ったか?

ただ、懸念はある。
髪の毛に色のついたおば様に微笑みかけられると、ユクは唸って威嚇してしまう。ユクはそれを友好の印とは見ていないらしい。「あら、いい子ねぇ」と声をかけられ、もっと距離が縮まると、ユクのマズルにはしわが寄る。リードを持つ私も緊張する。手を差し伸べられようものなら、吠えて威嚇する。

休日の過ごし方。

盲導犬のように、どこへでも一緒に連れて行けたらどんなに良いだろう。
だが、やはり、やめておいたほうが良さそうだね。