ユクは保護された犬である。
どのような状態で保護されたのか、くわしいことは分からない。ただ、お母さん犬と一緒に、あるいは兄弟たちと一緒に、というわけではなかったらしい。一匹で歩いていたのだろうか。群れからはぐれて迷子になっていたのだろうか。とにかく、複数で行動していた状況ではなかったのだろう。

野良犬としての片鱗は、今でも十分に確認できる。前にも書いたが、散歩に出るとまるでリードなどついていないかのように、ユクは自由に歩く。少し自由すぎるほどだ。

私と妻はユクに甘い。それは保護犬という過去を持っているからかもしれない。何があったのか知らないが、うちに来たからには、できるだけ楽しく、のびのびと過ごしてほしいと思うからだ。

振る舞いは明らかに野良犬そのものだが、冬になってコートなどを着せると、途端に「ええとこの坊っちゃん」風情になる。まさに「野良犬にも衣装」である。コートといっても犬用なのでお腹周りは覆われず、見ていると少し寒そうだ。また、Tシャツを着せるとこれがまたよく似合う。濃いグリーンのシャツなど着せると、英国のおぼっちゃまのように見えるからおかしい。

どんな身なりをしていても、ユクの野良犬的な行動は変わらない。
苦笑いしながら、その後ろ姿に、私はただ着いていく。
