ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

野良犬の散歩は、においの地図を歩く。

犬と散歩に出かける。ユクの目は真剣そのものだ。あらゆる場所の匂いをかぎ、キョロキョロしながら、時に立ち止まり、後ろを振り返っては、何かを調べているような面持ちで歩く。それが毎日のことなのに、まるで生死をかけた一大事のようだ。そんなに懸命で、くたびれないのだろうか。

ギリギリを攻めるユク坊。

犬には興味がないのに、犬の匂いには大変興味があるという、少し変わった犬である。一体そこにどのような情報が含まれているのだろうか。匂っただけで「あぁ、あの犬の匂いだな」と分かるのかもしれない。あるいは、かつて駅にあった伝言板のように、匂いを通してお互いにメッセージのやり取りでもしているのだろうか。

記念撮影に付き合うユク坊。

ユクが突然立ち止まり、急に引き返す。私はリードを引っ張られて、ひっくり返りそうになる。しつけの行き届いた犬ならば、散歩中にこのような振る舞いはしないだろう。だが、ユクは元保護犬だ。人間の歩調に合わせて歩くというスタイルではない。まるで何にも繋がれていない野良犬が、気の向くままにほっつき歩いているかのようだ。残念ながら、盲導犬のように賢くは歩けない。

ややこしいところも果敢に攻めるユク坊。

そこはもう諦めている。自由に楽しませてやりたいと思っているからだ。最低限、人様に迷惑をかけなければそれで良い。嫌いな犬と仲良くする必要もない。吠えたり唸ったりするのは迷惑になるから、そんなときは抱き上げてやる。すると、まんざらでもない表情でおとなしくなる。そのまま、やり過ごすことができる。

まんざらでもない顔のユク坊。

しつけの本で「すぐに犬を抱き上げるのは良くない」と読んだことがある。最初はそれを守ろうと努力したが、やはり難しかった。今では素直に抱き上げて、吠えないようにするのが精一杯だ。十キロの中型犬は抱き上げ甲斐がある。夏は暑苦しかったが、涼しくなってきた今は、抱き上げるたびその温かさに少し癒やされている。