ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

海を前にして帰る犬。

週に一度、由比ヶ浜まで歩くというルーティンが続いている。
夏の終わりとともにその習慣も途絶えるかと思いきや、そうでもない。きっちり週に一回、ユクは海の方へぐいぐい引っ張っていく。しかも、それが大体、土曜か日曜なのが不思議だ。曜日を理解しているとは思えないが、海へ行ける日をどこかで感じ取っているように見える。

今日は何曜日だっけなぁ。

家から海までは、およそ一時間強。ただ歩くだけなら一時間もかからないはずなのに、ユクの最大の楽しみである“匂い嗅ぎ”が随所で繰り広げられる。これに付き合うのも、飼い主の務めだ。

クン活、命!

散歩中のユクを眺めていると、まるで野良犬のようだと思う。しつけが行き届いていない、と言われれば耳が痛い。だが、そもそもユクはブリーダーに育てられた犬ではない。宮古島を自由にほっつき歩いていた犬だ。完全に矯正しきれないところも多い。それでも、最低限のルールを守り、人間社会にうまく順応している。それで十分ではないか。

せっかくうちに来てくれたのだから、ユクの楽しみである「クン活(匂い嗅ぎ)」くらいは、たっぷり時間を取ってやりたい。
そんなわけで、海までの道のりはどうしても長くなる。

風が強くて砂丘のようです。

やっと由比ヶ浜に着いた。今日は風が強い。
波乗りをする人なら、こういう日を待ちわびていたのかもしれない。だが、波乗りをしている人もまばらだ。どういう日が波乗りに適した日なのだろうか。海の状態を知らずにやってくる私たちにとっては、砂浜の砂が容赦なく顔に吹きつけ、目を開けていられないほどの砂塵の洗礼デーという感じだ。

ユクは海辺に向かって走り、いつものように海から十メートルほどの場所で立ち止まった。しかし、今日は座らない。普段なら伏せをして、しばらく波や人を眺めているのに。

スマイルは0円ではありません。

「さ、帰りましょう」とでも言うように、ユクは自宅の方角へ向かって歩き出した。どうやら今日は、のんびりする気分ではないらしい。砂塵まみれの風が、さすがのユクにも不快なのだろう。

クアアイナのテラス席にて。

帰り道、「クアアイナ」に寄るのもルーティンのひとつだ。ユクは迷わず階段を駆け上がり、店の中に入ろうとする。犬は、店内は許されていないので、テラス席へ誘導する。

遠くまでやってきたのだ、ハンバーガーくらい食べさせてほしい。ユクにもパンの部分を少し分けてやった。

そんなことある?

 

むさぼり食うばかりで、ハンバーガーの写真が一枚も無いことに、帰路で気が付いた。
まあいいさ。
ハンバーガーの出来上がりを待つ時間に撮った犬の写真は何枚かある。
それを眺めれば、秋の海風の匂いと砂のざらざらした感触が思い出される。