捨てようと思っていたマットをリビングまで持ってきて置いていたら、犬がそれを気に入って捨てられなくなった話は以前に書いた。
夜毎、この上で寝転がったり、へそ天をして見せたり、掘るような仕草をして熱心に前足で掻いたりするのだ。引っ掻く具合が心地良いのか、車輪の中を走り続けるハムスターのように、掘る動きを続ける。

これに人間も参戦する。
ユクは、お前もやるのか?という表情で一瞬止まり、またおもむろに掻き始める。人間に負けないように、少し速度が上がっているようにも感じる。また、人間を阻止しようと甘噛みも織り交ぜてくる。六歳になったが、いつまでも坊やだ。

過日。
妻に聞いた話。
ユクは立派にお留守番を務め上げた褒美をもらったものの、もっと褒美が欲しいと見えて、「ワンちゃん芸」を披露し始めたそうだ。お魚のぬいぐるみを咥えては投げ、また周りに睨みをきかせながら、あらためてお魚に跳びかかる。一連の小芝居を行ったそうだ。

段々と熱が上がってきたユクは、褒美が出ないと、高まる気持ちの制御が効かなくなってくる。つまり、馬鹿走りすることになるのだ。
この日もその状態にまで突入したらしい。しかし、突然ユクがお気に入りのマットの上から走り逃げたそうだ。様子も少しおかしい。マットの方を確認すると、少しちびっていたそうな。犬が喜びすぎたときの「うれション」は聞いたことがあるが、ユクの場合は「馬鹿ション」だ。妻にそう言ったら、どちらも興奮してるから同じでしょ、と返された。確かにそうだ。

とうとうマットは燃えるゴミとして捨てられた。代わりとなるマットを買ってやらねばならないね、と本末転倒な会話が我が家では交わされている。