ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

フラッシュバックPart3

春、虫が動き始める。
私は虫が嫌いだ。ずっと嫌いだったわけではない。小学生の遠足のとき、毛虫を大量につかまえて、ビニール袋に入れて団地の水道メーターに保管した。保管したものの大量の毛虫はやっぱり怖くなって、水道メーターのドアを開けることはしなかった。
袋から脱出した毛虫が団地の階段を這い出し始めた。水道メーターのドアの向こうでは、ビニール袋から逃げ出した毛虫どもがうじゃうじゃと這い回っているに違いない。おぞましい。絶対に開けたくない。

おれも動き始める。

お隣さんが訪ねてきた。
犯人は私に決まっている。お隣のおばさんの監視付きで、おぞましい毛虫のうじゃうじゃ現場の片付けを行う。おぞましい。
そのことがきっかけという訳ではないが、虫が嫌いだ。

今年って・・。

ユクは虫というより、ハチが嫌いだ。そう、春はハチも飛び始める季節でもある。
二年前、ユクはあろうことかスズメバチに尻尾の裏を刺された。悲しい声を上げながら、尻尾を丸め込んでいた。すぐに病院に連れて行ったが、道中も痛そうにしていて可哀想だった。

その出来事以来、ユクは背後で羽音がすると、以前刺された箇所を確認する仕草をするようになった。

春眠。

今年もそれが始まった。
ユクが振り返って自分の尻尾を確認している。フラッシュバックは簡単には消えないようだ。フラッシュバックも三年目になる。