ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

もしかして噛まれた?噛まれた犬を褒めそやす。

ユクは臆病な犬であることは何度も書いた。
臆病であるがゆえに基本的に他の犬と仲良くできない。
仲良くできる犬はうちへ来たときから会っている犬か、見るからに優しそうだったり、奥手そうな雰囲気を醸し出す犬である。

川を怖がり、抱っこされて通過する怖がりなユク坊。

最近は、何度もお利口さんだよね、と話かける(うちでは「お利口さんのおまじない」と呼ばれている)ことで唸ったり吠えたりすることを少しは我慢できるようになった。少しだが、大きな前進だ。また、関わり合いたくない相手の場合は無視してすれ違うこともできるようになった。もちろん全部ではない。が、誰にでも唸ったり吠えたりしないだけでも、散歩が平穏になった。

外弁慶!

トイプードルやポメラニアン、チワワのような小さな愛玩犬とはあまり近づけない方針を取っている。ユクが噛むと怪我をさせてしまう可能性があるからだ。知っているお友達の犬でさえ、食べ物が絡むといさかいが起きてしまう。安全重視で引き離すことにしている。

雑種犬とは争わず仲良く挨拶できることが多い。
何か同じものを感じ取るのだろうか。

山の中は平和だな。

過日。
二頭の雑種犬を連れている方と遭遇した。
あちらの二頭とこちらのユクが十メートルほどの距離を保ち、見つめ合っている。睨み合っているわけではない、それほどではないが、相手を確認している感じがとても感じられる。

飼い主さんとご挨拶をし、少し犬同士の距離を縮めてみる。
まだ、お互いに相手の様子をうかがっている。私達はユクの表情を確認している。マズルの部分にしわが入っていないか、牙を出そうとしていないか、など。今のところ大丈夫そうだ。

うちでは甘えん坊。

犬同士の間隔が二メートルくらいになったとき、突然二頭の犬がユクに向かって走ってきた。ユクは驚いた様子だったが、怒ってガウガウ言った。駄目だった。飼い主さんが「似た感じなのにね」とおっしゃった。その通り。似た匂いを嗅ぎ取れなかったのだろうか。いや、ダッシュで近寄られてしまったので、ユクに非はない。運が悪かった。

また歩き始めて。
「噛まれたかと思ったけど」と妻が言った。
私にはそう見えなかったし、ユクも平気そうに歩いている。
そのまま歩き続けた。

あれ?なにか付いてるよ。

ふと。
ユクのダウンジャケットに綿が付いているのが見える。
いや、綿が付いているのではない、綿が出ている。

やはり噛まれていたのだ。妻の目撃情報が正しかった。

綿が出ている!

裸で歩いてなくて良かったな、ユク坊。
その夜は何度も、奇跡の犬だ、と褒めそやした。