ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

一人っ子的に育てられている犬と一人っ子育ちの飼主。

一人っ子はわがままだ、と世間的には言われることが多い。
一人っ子の私は、そのことにも慣れている。団地で生まれ育ち、隣には年の近い友達もいた。その子達は年子の兄弟であった。小学生になっても、兄弟がいる友達が何人もいた。だから兄弟の暮らしがどういうものか、ということは大体分かっている。子どもの成長は一年間でも相当なものだ。弟は良いようにされている、つまり言いくるめられていることが多いように見受けられた。
食べ物の分け前やおもちゃの使用権など、お兄ちゃんのほうが何かと有利であった。おかしな理屈で少ない方を選択させられたりしていたのは、年少者のほうだった。

独り占め!

その点、一人っ子はそのような憂き目に遭わない。争う相手が家の中にいないからだ。お菓子、おもちゃはすべて自分だけの物である。あとはどのような配分でそのお菓子を食べるのか、どれくらいの時間、そのおもちゃで遊ぶのか、ということを自分で決めるまでである。そのかわり、競争心のようなものはまったくもって育たない。

大学生になって、新入生のころ、皆で友達の家に集まる機会がよくあった。アルバイトができ、車の免許も持っている若者は自由に満ち溢れていた。自由と言ってもおおげさなものではない。スナック菓子を買いたいだけ買って、パーティ開けをして、皆で食べるくらいの自由だ。それでも自由を謳歌している、という実感があって楽しかった。

ふと、友達のうちの一人がポテトチップスを片手いっぱいくらいの量だけすくい上げ、自分のものとした。そして、隅に座って、ゆっくりと自分のペースで食べ始めた。彼は一人っ子だった。そして一人っ子の私も、彼がそうする気持ちをとても理解できた。
つまり、お菓子の分量やペース配分で争いたくないのだ。量的に勝った負けたは二の次である。少なくても良いが、量で勝つために、わざわざペースを早めて食べたくはないのだ。少なくても良いから、自分のペースで食べたいのである。勝ち負けは要らないのだ。気持ちが分かりすぎる。

何度も申し上げるが、競争心は育たない。

独り占め!

ユクは一人っ子ではないはずだ。
犬は数匹を産むはずなので、ユクにも兄弟姉妹がいただろう。
ところが保護のときは一匹だったようだ。どこかから逃げ出したのか、野良一匹生活を満喫していたのか、想像するのは楽しい。

今やわがまま坊や。

私たちが引き取ってからも一人っ子状態だ。わがまま放題である。このままでは一人っ子はわがまま、という世間の評価の通りになってしまう。
だが、一人っ子の人間のように、競争心のない、のんびりとした性格になるのか、といえばそうでもない。いわゆる「所有欲」と呼ばれる欲求がユクはとても高い。自分の物、自分に食べ物をくれる人、自分の縄張り、ということへの所有欲だ。これは理屈では説得できない。ブリーダーのもとで生まれて、最初から人間に世話してもらっている犬ならそのような所有欲も少なかろう。半年でも野良で生き抜いてきた犬にはその所有欲が芽生えてしまっている。その本能のような性質が生き抜くためには必要だからだ。他の犬を威嚇してでも自分の食い扶持を守る。そのようにして仔犬時代を過ごしたのだろう。

縄張りを守っているユク坊。(※ここはカフェです)

というわけで、競争心もそこそこにある、わがままな一人っ子という状態になっている。
世間様にはなるべくご迷惑をかけないように、これからもやっていく所存です。

かははは!