その言葉を知ったのは、アルフィーの歌だったろうか。パンデミック以降は、望まなくとも覚えなくてはならない言葉となったので、いまではおそらく幼い子供でも知っていることと想像する。
バンド活動を若い時からやってきたので、一般的な人よりも、ライブハウスという場所へ行く機会が多かった。過去形なのは、パンデミック以降は立ち寄っていないからだ。
少し行かないと、感染症云々よりも、酒と煙草と大きなスピーカーが嫌だったんだなぁ、と気付かされる。上記三つの物は、酔っぱらい、煙、轟音を生み出す。それらが感染症より嫌だ。
二十代の私なら、こんなことを吐かす爺の目の前にギターを叩きつけていただろう。人は変わるものだ。
大阪へ来た。
鎌倉より随分と都会だ。横浜くらいの都会感だろう。一日滞在を延ばして、仕事の関係で知り合った人たちとの呑み会に参加した。
まず、電車に乗っている人の多さに圧倒された。初めて望まぬ就職をして、毎朝通勤電車に乗ってお腹が痛くなったことを思い出した。お腹が痛くなって、その感覚を思い出したのだ。
犬を連れて野山を駆けるのは最高だ。毎日散歩に出かけていると、残念なことに、慣れてしまう。人間のそういう部分はどうにかならないものか。病気を患って健康を思うような、そういうところだ。
呑み会中に、妻からユクの写真が届いた。由比ヶ浜まで行ったようだ。ユクは満足気に浜でポーズを取っている。また写真が届く。今度は背景が真っ暗だ。「帰りません。友だち犬が来るかもしれません！」と頑固に広場で待つ犬が写っていた。
遠く大阪の居酒屋で、密やかに犬と妻のやり取りを思い浮かべる。これが「星空のディスタンス」というものか。
