春休みも夏休みも、ずっと高校野球を観ていた。近所の子供が集まって野球をして遊ぶのは、申し合わせたようにテレビでの高校野球中継が終わってからだった。大して仲良くもなかったのに、ご近所だというだけで一緒に野球をして遊んでもらっていた。その頃の私がもっと社交的だったのか、そういう時代であったのか。
中学高校になってからも高校野球をよく観ていた。そのくせ、小学生のときからサッカーに夢中になっていた。そしてなぜか、クラブ活動ではテニス部に入った。そして高校を卒業したときに、一気に高校野球への想いは冷めた。頑張っても自分が出られない年齢になったからだと思う。頑張れば出られるとでも思っていたのだろうか。きっとそうだ。
「まるでおっさんやな」と見えていた球児たちも、今見ると可愛い。最近では監督までも自分より若くなってしまったので、いよいよ監督という立場でも甲子園には行けなくなったのだな、と肩を落としている。
お盆休みに実家へ帰り、テレビで高校野球が流れている、という場面に身を置くのが好きだった。溜まっていく宿題程度の不安しかない、穏やかな毎日を思い出すからだ。
「ぬくぬくタイム」と称して、犬と窓辺でダラダラする時間を毎日設けている。主にお昼休みと夕食後にそれは催される。窓辺に人間が座ると犬がとことこやってくる。犬は人間の脚の間で丸まったり仰向けになったりする。犬はあくびをして、変な声が出てしまうこともある。
寝ている犬を撫でていると、縁側で猫といるお爺さんになったような気分だ。それも悪くない。犬と戯れながら春の高校野球中継を観る。
そうだ。審判としてなら、甲子園に行く可能性は残されているではないか。