ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

君には名前がある。ユクというのだよ。

ユクは自分の名前を覚えているだろうか。この人たち、機嫌よろしく撫でにくるときはやたらと「ユクユク」言ってやがるな、くらいには感じているのかもしれないが、それが自分の名であるということまでは、果たしてどうであろう。

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散歩中、「あれモモちゃんじゃない?」と大好きな犬の名前を言うと、え?どこどこ?とマズルを八方に散らして辺りを確認する。そのようなときは、名前の概念を理解しているようにも思える。

小学生の頃、「奇跡の人」というヘレンケラーの伝記映画を観た。ラストに、ヘレンケラーが水を触りながら、「ウォーター!ウォーター!」と叫ぶ感動的なシーンがある。水に名前がある、つまり、物や人に名前を付けて呼ぶという概念を理解した瞬間が描かれていた。(と思う。記憶はおぼろげゆえ)

このことからも、物に名前がある、ということは犬には理解が難しいのではないか、とも考えられる。言葉と、次の行動や起こることは結びついているように感じる。「ユク」と呼ばれると、撫でられたりおやつをもらえたり良いことがある。「モモちゃん」と発せられれば、モモちゃんが現れる。「散歩行くよ」と呼びかけられれば、外に出られる。このように。

f:id:oven9:20211214122921p:plain「ユク坊!」と呼びかけてみる。横で寝ていたユクが顔を上げてこちらを見る。ただの学習や反応以上のものが、ユクの眼差しから感じられるのだが、これは何か。

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スリッパを咥えて遊びへといざなうユク坊。