ユクとゆく

宮古島で保護された犬、ユクとの暮らし。

犬のいたずらに学ぶこと。すべては遊び。

飼っている亀に噛まれたことがある。
部屋の中に放してやって、自由に歩かせていたときのことだ。
亀は甲羅がずっしりしているので、フローリングを歩くとガタゴトと音を立てる。その音のおかげで、亀が部屋のどの辺を歩いているのか、ということが認識できるのだ。小さい(甲羅は成人男性の握りこぶし大くらい)ので、見失うこともある。そんなときは大体テレビやタンスの下で息を潜めている。誘い出すのは簡単で、エサの容器を振ってジャラジャラいわせると、ガタッ、ゴトッとまた現れる。

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ひっくり返ってプチパニック中のカメリ(クサガメ・オス・17歳)

そのとき、私は油断していた。亀は足元へ来て、私の足に頭を押し付けたり引っ掻いたりしていた。亀の鼻先は冷たくて気持ち良い。よそ見をした瞬間、足にチクリと痛みが走った。亀が噛んだのだった。これはよそ見がいけなかった。亀は噛もうとするとき、頭を少し引き、大きく口を開いてから噛む。噛むまでの予備動作が多い。じっと見ていれば、噛まれることは回避できたはずだった。

無論、亀に悪気はない。

さて、犬にも悪気はないものなのか。これは少し怪しい。これをやれば人がかまってくれる、人の注意を引ける、と考えて行動していることは間違いない。悪意はないが、人を遊びに誘い込みたい、という気持ちは大いに感じられる。それを悪気と呼ぶなら、悪気があるのではないか。スリッパを咥えて立ち去る様は、ウキウキしていて、明らかないたずら顔だ。

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スリッパを咥えて、期待通りにかまってもらえたユク坊

幼稚園生くらいの男児が、見えない敵と闘っていたり、踏み込むタイルにこだわりを見せて、妙な歩き方になったりして、母親を困らせている光景を街でよく見かける。男児は母親に注意されても、ケタケタ笑っている。母親が割と真剣に怒り始めても笑っている。この男児にとっては、母親の注意を引くための遊びなのだろう。犬がやっていることはこれに似ている。

「ある意味、犬は成長しない子狼のようであり、かつ狼の持っていた狩猟行動パターンを失っている」のだそうだ。(「犬の科学」より)

私はこの考え方が好きだ。腑に落ちる。いまでは、犬のすべてが遊びなのではないか、と思っている。身体が健康で、食べることに困らなければ、遊べば良い。人間だって、本来はその状態を目指していたのではないか。

人間は、子供の頃はずっと遊んでいるのに、成長するにつれて将来の不安を感じ(させられ?)て、遊びを忘れていく。遊んでいる場合ではない、狼のように生きろ、となってしまう。

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滑り止めマットをかじってしまったユク坊

遊んでいる場合ではない、という言葉はぜひ封印したい。遊びを大切に。
ユクを見ていると、もう一つ大切なポイントがある。それは独り遊びではない点だ。
ユクは、そこに人間がいないと、スリッパを持ち去ったりしない。

さあ、一緒に遊ぼう!

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